衆ノ雑感

地球環境時代におけるエネルギー政策を考える〜今を革えれば未来が変わる、持続可能な社会の実現と国際協調をめざして〜

日本は資源小国であり、資源の大半を海外からの輸入に頼っています。日常生活にも大きく影響する原油価格の乱高下をはじめ、政情的に不安定な中東原油依存度の高止まりが続くなか、石油・天然ガス大国であるロシアが資源の国家管理を強化し、経済発展著しい中国やインドなど新興国がエネルギー消費の増大に伴い資源囲い込みに奔走する等、世界情勢を俯瞰的な視点で捉え、国際協調を基軸としつつ、国益に合致するエネルギー政策を考えることが非常に重要となっています。また、21世紀が地球環境時代と呼ばれるなかで、地球温暖化防止京都会議(COP3)の議長国を務め、京都議定書の批准国でもある日本は、率先して持続可能な社会を実現することが求められます。
私は、博学篤志(博く学び篤く志す)をモットーに本ブログ「衆ノ雑感」を通じて情報発信しながら、より多くの方々がエネルギー・環境問題について関心を持っていただければ幸いと感じています。そして、掛け替えのない地球と次世代を担う子どもたちに明るい未来を引き継ぎましょう!

プルサーマル発電[2009年03月20日(金)]

九州電力(株)は2009年3月6日、使用済み核燃料から取り出したプルトニウムとウランを混合した酸化物MOX(モックス:Mixed Oxide)燃料に加工して再び玄海原子力発電所3号機(佐賀県玄海町)で使うプルサーマル発電の本格導入を明らかにした。なお、プルサーマルという言葉は、プルトニウムとサーマルリアクター(軽水炉)を組み合わせた日本独自の造語である。

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玄海原発(加圧水型軽水炉)の外観
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<出所>九州電力(株)
東松浦半島の西部に位置し、玄界灘を臨む風光明媚な場所に立地している。

フランスの総合原子力企業AREVA社が製造したMOX燃料は2009年3月5日、座礁でも沈みにくいよう船底を二重にし、人工衛星を駆使した航法装置や衝突防止レーダー、積み荷の監視装置を備え、耐火耐水性・放射線遮蔽・落下等の安全基準を満たす専用容器に収められた英国籍武装輸送船2隻によってフランス北西部のシェルブール港を出発し、テロ等を警戒して相互に護衛し合いながらアフリカ大陸南端の喜望峰を経由する南西太平洋ルートを通り5月下旬に日本領海、そして玄海原発へと向かう。MOX燃料の到着後は、国の輸入燃料体検査を受け、合格すれば8月下旬に実施される玄海原発3号機の定期検査時にMOX燃料最大16体を原子炉内に装荷して10月下旬からプルサーマル発電の試運転を開始し、11月中旬に営業運転する工程である。このほか、北海道電力(株)が泊原発3号機(北海道泊村)で、中部電力(株)が浜岡原発4号機(静岡県御前崎市)で、中国電力(株)が島根原発2号機(島根県松江市)で、四国電力(株)が伊方原発3号機(愛媛県伊方町)で2010年度までにプルサーマル発電を相次いで行う。九州電力(株)を皮切りに電力各社がプルサーマル発電に乗り出せば、発電時に温室効果ガスである二酸化炭素を排出しない地球温暖化防止の観点で寄与するほか、原油価格の高騰に対する抵抗力が高まり、資源国へのバーゲニングパワー(交渉力)強化に資することから、日本にとって気候変動とエネルギー安全保障の両面でプラスになると期待されている。

プルサーマル発電を計画している電力各社と原発
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<出所>経済産業省資源エネルギー庁
電源開発(株)(通称:Jパワー)が2008年5月に着工した大間原発(青森県大間町)は、2014年11月の完成を目指している。

プルサーマル発電は、限られたウラン資源(確認可採年数:100年)の有効利用を図るため、核燃料サイクルの中核事業と位置づけられている。電力業界で組織する電気事業連合会では、2010年度までに全国の原発16〜18基で行う目標を掲げており、順調に進めば玄海原発が国内初となる。世界では、1963年にベルギーでプルサーマル発電がスタートし、フランスやドイツ、米国、スイスなど50基以上の原発で実績がある一方、日本では、1999年に関西電力(株)が英国の核燃料会社BNFL社で製造されたMOX燃料を高浜原発3・4号機(福井県高浜町)に、東京電力(株)も福島第一原発3号機(福島県大熊町)に搬入し、2001年に柏崎刈羽原発3号機(新潟県柏崎市・刈羽村)でも受け入れたが、検査記録の品質管理データ改竄など不正が発覚して両社ともプルサーマル発電の本格導入が頓挫した経緯もあり、実績に乏しい。

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エネルギー自給率4%の資源小国・日本は、プルサーマル発電によって核兵器への転用が可能な余剰プルトニウムを保有せず、MOX燃料としてリサイクルすることでウラン資源を1〜2割程度節減できる。ところが、電力各社等の出資によって設立された日本原燃(株)が青森県六ヶ所村で建設中の使用済み核燃料からプルトニウムを取り出す再処理工場の完成は、トラブル続きで2009年8月予定と当初より10年以上遅延しており、費用が3倍の2.2兆円に膨らんでいる。日本の実態は、使用済み核燃料の再処理・MOX燃料の成型加工をフランスなど海外委託に頼って自前の工場を持たない不安定な状況に陥っており、結果的にMOX燃料を成型加工する工場を新設する費用と合わせて電気料金に反映されれば、消費者の恩恵も小さくなってしまう。また、使用済み核燃料からプルトニウムを取り出した後に発生する高レベル放射性廃棄物の最終処分場も決定しておらず、2007年に高知県東洋町が立候補したものの、安全性への疑問など地元住民からの反対で応募を撤回して以降、暗礁に乗り上げている(但し、2009年3月15日に福島県楢葉町が立候補の検討を表明)。さらに、既存原発(軽水炉)に替わり核燃料サイクルを確立するための“本命”と有望視されている高速増殖炉の実用化は、2050年まで目処が立たず、その期間、プルサーマル発電が“繋ぎ役”となり得るか今後の動向を慎重に見極めたい。

核燃料サイクル
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<出所>文部科学省
緒に就いた段階といえる核燃料サイクルの構築に向けて予断を許さない。

【参考】「衆ノ雑感」で取り上げた過去の関連記事
・出力向上原発 http://yamada-shuzo.blog.drecom.jp/archive/132
・高レベル放射性廃棄物 http://yamada-shuzo.blog.drecom.jp/archive/46

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